遠軽ストーリー構築プロジェクトシンポジウム 基調講演


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徳弘正輝という方はアイヌの父という言われ方をなさっていたそうです。たぶん上湧別町史にそう書いてあるんだと思います。立派な方だったと書いてあります。その時は、ああそうかと思っていたんですが、いきなり湧別の丸玉という旅館が出てくるものですから、えーっ!?と思って引っかかったんですね。

さっきご紹介いただいた「王道の狗」という漫画。これは90年代の後半に、もうアニメのほうは辞めて書きましたが。

その時に民権運動について、民権運動万歳っていう立場じゃなく、運動の中で傷ついたり敗北したりしながら、それでもなんとか一生懸命生きた人間の話を書こうということで思い立って書いたときに、どういうイントロにしようか?その時に徳弘さんという人を思い出します。

さっき町長のご挨拶で紹介いただいた上川の道路建設現場から鎖つけたまま逃げた囚人がいる。若い民権運動の一味であると。それが石北峠を越えて、もちろん鉄道も道も無いんですけど、山を越えて湧別川の谷に入ってくる。それでアイヌの人に拾われたりなんかして、湧別の徳弘さんの農場にかくまわれる。そういうイントロを考えて話を書きました。

講談社というところから出て白泉社というところから出しなおしていただいて、その出しなおしたところも絶版状態で巷にありません。もう1社くらい出してくれそうな会社があるので、もうちょっと経ったらもう1回装いを変えて出してもらおうかなと思ってます。

そうなったら、もしまだ見たことないよ!という方はちょっと見ていただきたい。少なくとも湧別が出てくるぞみたいな、瞰望岩も書いてありますね。調べたらその当時遠軽はどうだったか?でもどう調べても誰もいないんですね。しょうがないから瞰望岩を書いたんですけど。あまり地元からのリアクションがありませんね。その時に徳弘さんという方を思い出しながら書いて、かなり重要な人物として描かせていただきました。

 

ちょっと言い訳をここで挟みたいんですけど、学問をしている方とか、あるいはしっかりした書物を書かれたりする方は、嘘を書いたり作り話を書いたりするとたいへん傷がつきますからそれはいけない事なんですが、小説家の方もそうだと思いますけど、我々物語を書いている人間だから、非常にいい加減でですね、結構嘘を書くんです。

あるいは間違って後で開き直ったりします。僕も歴史の物語書く時、しょっちゅうやるんですけども、この「王道の狗」でも失敗をやったり故意に嘘をついたりしています。最初に全部本当だと思われると困るので、二つだけ弁解しておきます。これから読まれる方、あるいは読んでそれを知識として仕込んでしまわれた方には申し訳ないんですけども。

 

一つ目は、徳弘正輝という人がなぜ明治15年に湧別に入植したか、話の中で徳弘さんという人は竹橋事件に関係して、軍人でいられなくなったからここへ来た、というふうに主人公が語るところがあるんですが、これは間違いです。小池さんの本を後で読み返して気がついたんですけど、そうではなくて、この方は土佐の人なんですけど、土佐の郷士。土佐はご存知の通り坂本竜馬とかいろんな人材を輩出した。ある意味で薩長よりもっと多彩な人材を輩出したところですけれども、血の気の多いところでなんか事件があったらしいです。

立志社という民権運動を担ったグループがあるんですけど、そこでちょっと穏やかならぬことがあったらしい。書いてあるのは少年を殺したという、そういう事件があったらしい。生臭い話ですけどそういった事件があっていられなくなったのではないか、と小池さんは言っておられる。多分こっちの方が正しい。竹橋事件というのは間違い。僕はなにか故意に書いたかなと思って、なぜここで竹橋事件を出したんだろうっていうのを後からいろいろ追跡して調べたんですけど理由が見つからない。単純なミスだったと思います。

 

もう一つは、今日の話しの後のほうに関係するんですけども、その徳弘さんの家にフラーっと現れる武芸者がいて、武田惣角という方がフラっと現れる。それで主人公たちが気の荒いヤクザみたいな人にやられそうになった時に、取っては投げ、引いては投げする。で、徳弘さんと意気投合するというふうな描写があるんですが、それを読んで武田惣角という人、ある方面では有名な方なんですが、これの舞台は明治22年ということで「そうですか、明治22年に武田惣角さんは湧別とかそんなところまで行ってたんですか」って言われたことがあって、「すみません、あれは嘘です」と。これは意図的に嘘を書いています。

大正6年位でしたかね、武田惣角さんは遠軽に来ます。その時に白滝の開拓団の団長で紀州の田辺から来ていたのが植芝盛平さん。この方はいっぱしの武道家で腕に覚えがある方で、背は小さいけど回帰武装でめちゃくちゃ強い。これは、津本陽さんの小説で「黄金の天馬」という小説と「鬼の冠」でしたかね。二つ小説があるんです。ちょっと今記憶が定かでないんですけど、どちらかが武田惣角の話です。どちらかが植芝盛平の話。僕は両方読んだんだけど、どっちがどっちだか忘れている。

(「黄金の天馬」・・植芝盛平、「鬼の冠」・・武田惣角)


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