瞰望岩の伝説


カテゴリー: 言い伝え 

【インカルシの戦いの伝説-湧別アイヌと十勝アイヌの戦い-】

チトカニウシ(白滝の山)の山脈を境に北見国は、湧別アイヌの狩猟区になっており、湧別川をさかのぼるマスや鮭の群れ、鹿などの獣も豊富で長い間、平和な生活を営んでいました。

しかし、ある時十勝アイヌの群れが上川を経て、湧別アイヌの猟区権を犯し、談判したが聞き入れず、暴威をふるってなおも進もうとしたためチトカニウシの山を境に合戦が起こりました。

湧別アイヌは防御に努めましたが、強く狂暴な十勝アイヌに追い立てられ後退を余儀なくされ、各地から援軍を得てながらもセタニウシ山で逆襲を企てましたが予期に反するほどの死傷者を出し、山を捨てることになりました。

後退を続けた最後の砦、インガルシ(瞰望岩)を拠点にて必死に防戦に努めましたが、出ては攻め、敵を追い落としの激戦が続けられ勝敗はいつ果てるともわからない戦いを続けました。勝ち誇っていた十勝アイヌは、一挙に湧別アイヌを全滅しようとしてある夜暴雨をついて進みました。

そして、両軍最後の血戦がまさに行われようとしたとき、夜半にわかに湧別川は氾濫大洪水となって十勝アイヌを飲み込みました。

溺れ死ぬ者は数知れず、生き残った者も討たれ、あるいは捕らえられました。

雨の晴れ渡る頃、湧別アイヌ側に勝利の喚声がどっと上がりました。湧別アイヌもまた、生き残った者は少数でしたが、十勝アイヌを退けることができたのでした。


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